石と誰かの物語9*「次のイベントは?」河 美子 作

「今日は結婚記念日だな」


 げっ、忘れてた。
 義明はイベントを忘れない人。
 優しいけど、ときどき面倒だと思うこともある。
 私自身、誕生日だけなら覚えてるけど、父の日、母の日、誕生日、バレンタインデーにホワイトデー。そして結婚記念日なんて、我が家では祝ったことなど一回もなかったから。


「あのね、今日は早く帰って来るよ」


 だねよ、今日は。由美と飲み会よ。折角の女子会は一年ぶりなんだから。


「私は取引先と接待があるの、今日は遅いわ。日を改めて祝いましょうよ」


「えっ、そうなの? 結婚記念日だよ」


「でも、仕事はそれを考慮してくれないわ」


「まあ、それはそうだけど。残念だなあ」


「明後日の日曜ならどう?」


「仕方ないな。じゃ、日曜日に」


 きっと義明は何かプレゼントを買っているに違いないわ。私は何にも用意してない。というか、結婚記念日は何の祝いなんだろう。だって、たまたま一緒に役所に行った日がこの日だったし。七年前は派遣で働いていたし、とにかくあの時は義明だってまだ教育実習生だったもの。それも、会社を辞めて教師になるって決めて、二人で喧嘩をしながらの毎日だった。
 二人で駅で反対方向に分かれて電車に乗る。ホームからお互いの姿を眺めるのは難しい。いつもラッシュの中だから。見つけると、少し手を振るのは義明の方。私はケータイ片手にちらっと見るだけ。嫌いじゃないけどあんなに沢山の人の前で手を振ることは無理。


「僕はすぐに手を振るのに、乙女は知らん顔だね」


「そんな恥ずかしいもの。新婚でもないし」


「いいじゃないか」


「私は、ああ義明だわって目で確認するだけで幸せなの」


 そう言うと、ちょっと嬉しそうに笑う。本当に可愛い人だわ。どうしてこの人と結婚したんだっけ。
 あれは十年前のこと。二人とも新卒で働き始めた時だった。義明が勤め始めたのは菓子メーカーの営業。いろいろな会社にお菓子のボックスを置かせてもらいたいと頭を下げるのが新人の仕事だった。彼が来たときに受け付けたのが私。汗をかきながらも一生懸命説明するのが可愛くて、ついつい承諾した。


「もう、ハンサムに弱いな、乙女ちゃんは」


 上司は笑っていたが、そう、あの頃は会社はおじさんばかりで若者を見ることはなかった。しかも、こんな中小企業の会社にもお菓子ボックスを持ってきてくれるメーカーは彼が初めてだった。新鮮な風を運んでくれた気がした。昼休みに本を読んでいる私に、小さなチョコをおまけにくれたり、偶然誕生日と重なった日には、キャンペーン用のぬいぐるみをくれた。
 あまり可愛げのない女性の名前が坂本乙女かと、龍馬の姉と同じ名前でどこでもすぐ覚えてくれた。営業にはいいが、私は好きになれない名前だった。両親はなかなか子宝に恵まれず、結婚十五年でできた娘を本当に可愛がってくれた。だから、私の誕生日や子どもの日は祝ってくれたが、自分たちの結婚記念日などどうでもよかったようだ。
 電車でそんなことを思い出していたら、由美が子供が熱を出したからと飲み会延期のメールが来た。


「あれ、そうなんだ」


 だったら結婚記念日を祝おうか。
 調子のいい私は義明にメールした。


「今日、やっぱり祝いましょう。早めに切り上げるよう、仕事がんばるわ」


 すると、義明はすぐに返信が来た。


「そうだよ。よし、すぐに帰るから」


 妙にテンションが上がった。なんだか気持ちが華やぐ。不思議だ。別に待ち焦がれた日でもないのに。昼休みにプレゼントを買いに行く。
 去年はブックカバーだった。今年は何にしよう。費用は三千円程度。ちょっとおしゃれな文具店に行く。この店はお気に入り。いろいろと見ているとおしゃれなボールペンが目に入る。
 いつも百均のボールペンを使ってるから、これにしよう。ラッピングも頼む。紺のリボンがいい。
 会社に戻ると、机の上にびっくりするほどの書類の山。


「え、係長これどうしたんですか」


「ああ、悪いけど、あの三木島商会がつぶれたって一報が」


「そんな、昨日社長会ったのにそんなこと何も言ってなかったですよ」


「夜逃げしたって」


 こことの取引はもう二十年以上なのに、最近はあまりいい評判を聞かないからと、今年は半分に減らしたばかり。娘の嫁ぎ先とあって社長も取引をゼロにするわけにもいかなかったがその親切心がとんでもないピンチになった。


「お嬢さんは?」


「消えてるらしい。社長も心配して探し回ってる。君はその書類から三木島のお金が全部でどれだけか書き出して」


「はい」


 結婚記念日は……。そんなこと言えない。

 急に仕事が入ったことだけは義明にメールした。
 およそ一千万が回収不可能となりそうだった。
 銀行や信金にみんな走り回っていた。こちらも不渡りを出すと破産になる。みんな真っ青だった。
 社長がありとあらゆる伝手を頼って資金はどうにか調達できそうと分かったのは、もう日付も変わる頃だった。
 最終電車に乗り、家に着く。
 ドアを開けると、紙テープで作ったアーチ。
 食卓には花がコンポーネントに飾られている。
 鍋には煮込みハンバーグ。お腹がすいていることも忘れていた。コートを脱いで寝室に入る。義明はいびきをかいて寝ている。そっとクローゼットにコートを置いてパジャマに着替える。起こさないように暗闇で着替えていたら、思い切りドアに足の小指をぶつけた。


「いったーい!」


 その声に義明が飛び起きた。


「どうした」


「小指をぶつけた。ごめん、起こしたね」


「遅かったね、大変だったね」


「うん」


 義明は肩を抱きながらお疲れさんと言ってくれる。


「食べる?」


「うん」


 彼は台所の鍋を火にかける。
 彼の料理は美味しかった。
 大変だった一日をまくしたてた私を彼はうなずきながら聞いてくれた。


「そうか、そうだよな。社長も娘の行き先が分からないと心配だよな」


「そうなの、お金はどうにかなりそうだけどそこなのよ」


 ひとしきり話すと、わがままな私はプレゼントを渡した。彼はにこにこと受け取った。


「乙女さん、どうもありがとう。大変なのによく思い出してくれました」


「忘れないわよ、私」


「だよね、じゃ僕から」


 義明は小さな袋を取り出した。


「はい、結婚記念日だから」


「ありがとう」


 中には青白い石のペンダント。


「何の石?」


「ブルーカルセドニーだって。北野先生がこの石は絆を深めるっていうから」


「へえ、きれいな石」


 北野先生は養護教諭で彼はよく相談しているみたい。五十代の優しい先生で生徒の信頼も厚いそうだ。パワーストーンの話は保健室に来る生徒にはとても関心があるそうだ。


「誰でも話したいことはたくさんあるけど、話しやすい人はそういないからね、北野先生のような人はありがたいさ」


「そうね、そんな先生がいたら随分と心が軽くなるわね。私も話したいな」

 あの日から身に着けるようになったブルーカルセドニー。
 そのせいかよくわからないけど、今妊娠五か月。
 昨日初めて腹帯をつけた。
 彼の喜びようは半端でなかった。これほど待っていたのかと感心するほどだった。私には何も言わなかったけど欲しかったのね。ますます家に早く帰るようになって少し困るほどだ。

 名前は何にしようか。
 乙女の子だから小乙女だと彼は簡単に言うけど、それだけは絶対に阻止したい。

 生まれる日はひな祭りだって。

 イベントがまた増えるわ。

 

 

1.21新作立ち返り

 

今月も50点ほど公開させていただきました。

新作をご覧いただきまして、ありがとうございました。

 

大方、公開当日に持ち主を決めて去って行きました。

 

 

 

 

 

kusaさんの真骨頂、

シャンデリアシリーズが登場しました。

店主、もっとも好みの

楽園シャンデリア(↓)

こちらは持ち主様を求めてまだピクニック中です。笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アフリカンオパールのバングル、

ボルドージェードのバングル

ボーダーインカローズネックレス、

クリスタルクラスターネックレス、

ロングのマザーオブパールネックレス

グレーパールのコットンパールピアス

以上はまだございますので、

お時間あるときにまた

のぞいてみてくださいね

 

店主

 

石と誰かの物語8*「火星の星なの」河 美子 作

 ピンヒールの靴を買った。

 

 なんと7センチのヒールだけど、これを履くとものすごく美脚に見える。普段はスニーカーだから膝もきつい。

 

「何、このハイヒール」

 

 素っ頓狂な声を上げるのは妹のエリカ。

 

「お姉ちゃん、こんなの履いて大丈夫? スニーカーやサボしか履いてないのに」

 

「大丈夫だから買ったの」

 

「うっそー、これ履いて誰に見せるの」

 

「違うわよ、これ履くとすごくシャンとするの」

 

「履かせて」

 

 妹は制止する前に勝手に履いて玄関の前でポーズを決める。

 

「ダメよ、あんたには23センチは入らないでしょ」

 

「ぴったり」

 

「嘘よ、あんたは23.5でしょう。広げないで」

 

「ほら、ぴったりよ」

 

「早く脱いで」

 

 妹を押しのけて靴を奪い返す。心なしか広がった気がする。

 

「やめてよ、新しいのに」

 

「ふーん、お姉ちゃんが靴を買う時って好きな人ができた時だよね」

 

 この妙に鋭い嗅覚が妹にはある。

 

「放っておいて。別に意味はないんだから。バーゲンでたまたま安かったの」

 

「そうかなあ。こんな履き心地の悪い靴なんて見せるだけでしょう」

 

「あなたはそうでも私は違うの」

 

 にやにや笑いながら妹は私を覗き込む。

 

「陽菜さん、早く言ってしまいなさい。どこの誰を好きになったの?」

 

「うるさいわね」

 

 玄関で問い詰められたらすぐに話してしまいそうになる。妹は夢は刑事っていうからぴったりね。我が家は会社員の父と保育士の母、短大生の私に高校3年の妹。一つ違いだけど私よりずっと大人びている。

 その夜、母が真面目な顔をして私たちの前に座った。

 

「お父さんから大事な話があるの」

 

 無口な父が娘たちに向かって口を開いた。

 

「神戸のおじさんの店が倒産したんだ」

 

 神戸のおじさんは父の弟でブティックをしていた。奥さんとは二年前に離婚して子どもは二人ともおばさんが連れて行った。なぜそうなったかはよくわからない。でも、そのおじさんの店とどういう関係があるんだろう。

 

「実はあの店を開くときに保証人になっていて、倒産したとなるとその借金がうちにも掛かってくる」

 

「え、いやだあ、そんなの」

 

 エリカは大声で不平を言う。

 

「まあ、聞きなさい」

 

 父は妹に向かって言った。

 

「借金はおじいちゃんが土地や家を処分してあと足りない分を、うちが払うことになりそうだ」

 

「私たちの学校は?」

 

 恐る恐る聞いてみた。

 

「うん、大丈夫だよ。うちは夫婦で働いているし、そこまではしなくてもいいだろう。でも、家を建てるつもりだった貯金はなくなる」

 

「そんなあ、おじさんが払えばいいじゃん」

 

 母が妹の肩を抱きながら

 

「それで足りないからうちに来るのよ。最初から保証人は嫌だったのよ。でも、おじいちゃんやおばあちゃんにも頼まれたし、良治さんは他人には頼めないって」

 

「頑張ってやっていたが、光江さんが家を出た時に貯金通帳を渡してしまったというか、持って出たそうだ」

 

「そんな、ひどいわよ。無関係な我が家まで借金をとられるのに」

 

 妹をなだめながらも母もそうねと呟いた。

 父は淡々と語るがここ数日両親が夜遅くまで話し合っているのは気づいていた。

 ヒールを買ったことを後悔し始めた。バイトをして買ったのだけど、こんな実用的でない靴をどうして買ったのか、ただ付き合い始めたボーイフレンドの浩介に見せたくて一万円以上もするのに買ってしまった。普段は五千円前後の靴しか買わないのに。部屋に戻って自分の通帳を見ると、二十三万円超という数字が。意を決して父の前に持っていく。

 

「お父さん、これを使って」

 

 娘の通帳をじっと見ながら、父と母が顔を見合わせてから言った。

 

「いいんだよ、僕たちの預金でどうにかなるんだから。ボーナスから貯めていけばいいんだから。二人の小遣いやお年玉を貯めてきたものを使うほど僕らも弱気じゃないよ。気持ちはすごくうれしいけど」

 

「本当よ。どうにかなるわ」

 

 私は二人の預金を聞いたことがあった。確か、二千万円はあった。それがすべて消えてしまったのか。

 

「おじいちゃんたちも家を売るし、随分と大変なことになったが、幸いみんな健康だ。これからしばらく働けばまた少しずつ貯金もできるよ」

 

「おじいちゃんたちはどこに住むの?」

 

「市営住宅の空きがあってそこにうつるそうだ」

 

 あの大きな松のあるおじいちゃんの家。築山があって庭木の剪定をするのがおじいちゃんの趣味だったのに。

 

「おじさんはどうするの?」

 

「ああ、店も光江さんの才覚があって始めたものだし、良治ではどうにもならないだろう。仕方ないがしばらくはおじいちゃんたちと一緒に暮らすことになるだろう。良治のマンションも手放したそうだよ」

 

「なんてこと」

 

 本当にこういうことがあるのかと、他人事だった連帯保証人の話。ドラマや小説ではなくて我が家に降りかかった話。母の脱力感は大変なものだったろう。先ほどから涙がこぼれて止まらない様子だ。

 

「あのね、学校は止めてもいいよ」

 

「いいんだよ、生活は変わらないさ。ただ貯金がないからそこは大変だけど。母さんには本当に申し訳ないよ」

 

 父は泣いている母を見つめながらうなだれた。

 

「お父さん、本当にこの通帳預けておくから。困ったら使って。バイト代も入れるから」

 

 そう言うと、母の方が声を上げて泣いて部屋を出て行った。エリカはすぐ使ってしまうからたった数千円しかない通帳とにらめっこしながら泣いていた。

 

「私って本当にダメなやつ」

 

「そんなことないよ」

 

 妹を抱きしめた。やっぱり妹は可愛い。

 翌日、ヒールの靴を袋に入れて、レシートを持って靴店に行った。

 

「これ返品したいんです」

 

「あら、お似合いでしたのに」

 

 店員はすぐに応じてくれそうにない。

 

「家が倒産したんです」

 

 その一言から、あわてて店員は返品の手続きをしてくれた。こんなに効き目のある言葉なのか。なんだかつまらない。握りしめたお札を財布に入れてハンバーガー店のバイトに向かう。

 

「おはよう」

 

 バイト先の浩介はいつものさわやかな笑顔だ。

 急に涙がこぼれてきた。

 

「どうした」

 

「後で、話を聞いて」

 

「あ、ああ」

 

 私の涙など彼は見たことない。本当に驚いて戸惑っているようだ。

 

「僕も話があるから」

 

「うん」

 

 バイトが終わっても授業に急ぐため、会うのは7時となった。学校は友だちと卒業旅行の話の続きだったが突然キャンセルすると言う私の話にみんなブーイング。昨夜の話を伝えるとみんな無言になった。

 

「陽菜、大丈夫?」

 

「うん、やめることも考えたけど、両親の預金を出すことで決着するらしいの。それでも、これからはバイト代も入れようと思う」

 

 沈んでいく友だちの表情。自然とそこには居づらくなって席を立った。

 昨日までの華やかな話はこんなにもあっけなく終わるのか。セブ島に行こうと貯金していた。もうそんなことは無理だ。母のうつ症状も気になる。今朝は起きれず、保育園を休んでいた。

 急に勉強もしたくなる。昨日までは公務員の勉強なんてそこそこしかしなかったが、今日は質問までしたくなる。こんなにも大切な時間だったのかと今更ながらのんべんだらりと暮らしていたことに腹が立つ。

 ノートもしっかり取って、待ち合わせ場所に行く。

 浩介とは書店の中にあるカフェで待ち合わせ。彼はもう来ていた。

 

「待った?」

 

「ううん、僕も今来た」

 

 こうやってゆっくり話すのは三回目。付き合いだしたばかりの私たち。向かいあうと話しづらいので隣に座る。

 

「実はね、連帯保証人に父がなっていて。父の弟の店がつぶれたので借金がうちにかかってきたの」

 

 浩介は目を見開いて事の成り行きを聞いていた。何も口を挟まずに私の話を聞き続けた。泣いている母のこと、祖父母が家を明け渡すこと、そしてなぜか靴の話。見せたかったヒール。

 

「大変だな。でも君のお父さんはつらいだろうね。お母さんにも申し訳なく思うだろうし、おじいちゃんたちのことも心配だろうし」

 

「うん、でも、私たちの学校や生活は変わらないからって。でも、そういうわけにもいかないよね、貯めてきたお金がパーになるんだもの」

 

「そうだね、僕だったら相手を殴り倒しそうだな。でも、自分の弟なら仕方ないか」

 

「うん、なんかショックで震えが止まらない」

 

 隣り合って座っていたから、浩介が手を握ってくれた。震えていた手を握られると、涙があふれてきた。

 

「大丈夫だよ、君たち家族は。乗り越えられるさ」

 

 頷きながら浩介の手を握り返した。

 

「そんなときに決まらない話だけど、僕の話はね、これ」

 

 ポケットから出てきたのは黒い石のペンダント。

 

「なあに、これ」

 

「君へのプレゼント。タイミング悪いね」

 

「え?」

 

「実はね、この石磨いたの、僕なんだ。科学博物館に勤めてる父が昔から石を集めていてね、ダイヤとかエメラルドとかではもちろんなくて、黒曜石とか雲母とかなんだ。でも、その中からきれいな石を選んでもらったんだ。これ、ヘマタイト」

 

 きらきら光る石だが、不思議に心惹かれる。

 

「勝負運とか、自信を持つとか言う意味があって、アスリートが持つことが多いんだって。それに火星でもヘマタイトは見つかってるよ。夢があるだろ」

 

「これ、火星の?」

 

「違うよ、探査機で見つけたのはNASAにあるよ、これはイギリス産」

 

「ふーん」

 

「宝石というほどではないけど、今の君には向いてるかな」

 

「そうだね、すごくいい石」

 

 早速身に着ける。

 

「あ、いいねえ」

 

「ありがとう。本当にうれしい」

 

 ヒールではないけど、スニーカーとシンプルなグレーのセーターによく似合う。

 

「うん、いいよ、似合う」

 

 満足そうな浩介。これをせっせと磨いていたと思うと可愛いし気持ちが嬉しい。

 店を出ると、自然に手をつなぐ。さっき初めて握られた手。それが二人を引き寄せていくのか。いつもより話もどんどん弾む。胸で揺れるヘマタイト。

 二人でこんなに話をできるなんてぎくしゃくした二回目までのデートが嘘みたい。

 浩介が磨いたヘマタイト。

 

 自信を持たせるって、本当みたい。

 

 母にも貸してあげようかな。

 

 エリカにはやめとこう。